## はじめに:T710 から始まった省電力クラウド構築
長年使ってきた DELL PowerEdge T710 は、性能こそ十分でしたが、
- アイドルでも 180〜220W の電力消費
- ファン騒音
- サイズの大きさ
- 老朽化によるリスク
といった課題がありました。
そこで今回、 「できる限りコストをかけずに、省電力で柔軟な自宅クラウドを作る」 というテーマで構成をゼロから見直しました。
その結果たどり着いたのが、
- Raspberry Pi 5(メイン)
- Raspberry Pi 4B(サブ)
- OCI(外部ノード)
- Tailscale(完全メッシュ VPN)
- Zabbix(監視基盤)
を組み合わせた、小型ながら強力なクラウド環境です。
## 全体構成
今回の構成は、以下の3ノードを中心に動作します。
- Raspberry Pi 5:Proxmox メインノード / Zabbix Server
- Raspberry Pi 4B:Proxmox サブノード / Zabbix Agent
- OCI(Oracle Cloud):外部ノード / Subnet Router / Exit Node / Zabbix Agent
これらを Tailscale で完全メッシュ化し、 どこからでも安全にアクセスできる環境を構築しています。
## Proxmox
Raspberry Pi 5(8GB RAM)をメインノードにした理由
CPU アーキテクチャ
- Pi5:Cortex-A76(2.4GHz)
- Pi4B:Cortex-A72(1.5GHz)
A76 は A72 と比べて
- IPC が約2倍
- キャッシュ構造が改善
- 分岐予測精度が向上
→ 仮想化環境での体感性能が大幅に向上
PCIe 接続 SSD の採用
Pi5 は PCIe 2.0 x1 を外部に引き出せるため、 NVMe SSD をシステムディスクとして利用可能。
- I/O 性能:100〜400MB/s
- SDカードの数十倍の速度
- VM / LXC の起動が高速化
Proxmox のクラスタリング
- Corosync によるクラスタ通信
- Quorum による多数決
- Pi5 を“中心ノード”にすることで安定性向上
LXC と VM の使い分け
- LXC:軽量で Pi に向いている
- VM:OCI や x86 と連携する用途で利用
電力比較:T710 → Pi クラスタで約 95% 削減
| 機器 | アイドル時 | 最大負荷時 |
|---|---|---|
| T710 | 180〜220W | 300W 超 |
| Pi5 | 4〜7W | 10W 前後 |
| Pi4B | 3〜5W | 7W 前後 |
Pi5 + Pi4B 合計:7〜12W → T710 の 1/10 以下の電力で運用可能
## Tailscale
Tailscale を採用した理由
- ルーター設定不要
- NAT 越え自動
- 暗号化通信
- どこからでもアクセス可能
Pi5 / Pi4B / OCI の3ノードを完全メッシュ化し、 安全で柔軟なアクセス環境を実現。
技術的な仕組み
WireGuard の暗号化
- ChaCha20-Poly1305
- Curve25519
- NoiseIK ハンドシェイク
- BLAKE2s
ARM CPU(Pi5 / Pi4B)でも高速に動作。
NAT Traversal
- STUN(UDP ホールパンチング)
- DERP(中継サーバ) → どこからでも安定接続
MagicDNS
- tailnet 内の DNS を自動管理
pi5.tailnet.ts.netのような形でアクセス可能
Subnet Router(OCI)
- OCI が自宅 LAN のゲートウェイになる
- 外部から自宅 LAN 全体にアクセス可能
Exit Node
- 全トラフィックを OCI 経由に
- 公衆 Wi-Fi でも安全
- 必要時のみ ON
## OCI
OCI を採用した理由
- Always Free(無料枠)で常時稼働
- 外部ノードとしての可用性
- Pi と同じ ARM アーキテクチャで相性が良い
技術的な仕組み
Ampere A1(ARMv8)
- 最大 4 vCPU(無料枠)
- Pi5 と同じ ARM 系で高速
- 暗号化処理が軽い
OCI のネットワーク構造
- VCN(仮想ネットワーク)
- サブネット
- セキュリティリスト
- ルートテーブル
Tailscale を使うため、 インバウンドの穴開けは不要。
Subnet Router / Exit Node
- 自宅 LAN へのゲートウェイ
- 全トラフィックの出口にもなる
- 暗号化された WireGuard トンネルで安全
Zabbix Agent としての役割
- 外部視点から自宅クラスタを監視
- 回線遅延や死活監視が可能
## Zabbix
Zabbix を採用した理由
- 完全無料
- ARM でも軽量に動作
- Proxmox との相性が良い
- Tailscale で安全に通信
- 外部ノード(OCI)も監視できる
技術的な仕組み
Zabbix Server(Pi5)
- Poller:Agent からデータ取得
- Trapper:プッシュ型データ受信
- DB:NVMe SSD で高速
- Housekeeper:古いデータの整理
Zabbix Agent(Pi4B / OCI)
- パッシブモード:Server → Agent
- アクティブモード:Agent → Server
- Tailscale 上で安定動作
Proxmox の監視テンプレート
- CPU / メモリ / ストレージ
- VM / LXC の状態
- ノードの負荷
- クラスタの状態
外部視点の監視(OCI)
- 自宅回線の遅延
- Pi5 / Pi4B の死活監視
- Tailscale の接続状態
- OCI 自身のリソース状況
## まとめ:低コスト × 省電力 × 高可用性の自宅クラウド
今回の構成により、
- T710 → Pi クラスタで電力 95% 削減
- Tailscale / OCI / Zabbix はすべて無料で運用可能
- 外部から安全にアクセスできるクラウド環境が完成
- 小型ながら柔軟で拡張性の高い構成
という、理想的な自宅クラウドが実現しました。



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